仮定法とは、現実とは異なる状況や仮の話を表現する文法です。日常会話からビジネス英語まで幅広く使われる重要な表現ですが、時制や形が特殊なため、正しく理解することが求められます。本記事では、仮定法の基本ルールから具体的な使い方までを詳しく解説し、英語学習者がスムーズに使えるようにします。
1. 仮定法とは?
仮定法(Subjunctive Mood)とは、現実とは異なる状況や想像上の出来事を表す際に使われる文法です。特に、「もし~だったら」「万が一~なら」といった仮の話をする場合に用いられます。
英語の仮定法には主に以下の3つの種類があります。
仮定法過去(現在の事実と異なる仮定)
仮定法過去完了(過去の事実と異なる仮定)
仮定法未来(未来の可能性が低い仮定)
それぞれの使い方を詳しく見ていきましょう。
2. 仮定法過去とは?
仮定法過去の基本ルール
仮定法過去は、現在の事実とは異なる仮定を表すときに使います。実際には起こっていないことや、現実には不可能なことを仮定して話す際に用いられます。たとえば、「もし~だったら」「もし~できたら」という表現をする場合に使われます。仮定法過去は時制が過去形になりますが、意味としては現在の仮定を表すのが特徴です。
基本の形は以下の通りです。
If + 主語 + 動詞の過去形, 主語 + would/could/might + 動詞の原形.
なお、be動詞を使う場合、すべての主語に対して「were」を使うのが一般的です。これはフォーマルな英語表現として広く受け入れられています。
仮定法過去の例文
・If I had a car, I would drive to work.
(もし車を持っていたら、車で通勤するのに。)
・If she were here, she would help us.
(もし彼女がここにいたら、私たちを助けてくれるのに。)
・If he were taller, he could become a basketball player.
(もし彼がもっと背が高かったら、バスケットボール選手になれるのに。)
・If we lived in a bigger house, we would have more space for our pets.
(もっと大きな家に住んでいたら、ペットのためのスペースがもっとあるのに。)
仮定法過去は、実際にはそうではないけれど「もしそうだったら…」と想像する場面でよく使われます。特に、現在の状況を変えたい気持ちを表現する際に役立ちます。
3. 仮定法過去完了とは?
仮定法過去完了の基本ルール
仮定法過去完了は、過去の事実とは異なる仮定を表すときに使います。つまり、すでに起こってしまった出来事に対して、「もしあの時こうしていたら」「もし~だったら、違う結果になっていただろう」と過去を振り返る表現をする際に用いられます。
基本の形は以下の通りです。
If + 主語 + had + 過去分詞, 主語 + would/could/might + have + 過去分詞.
この構造を使うことで、「過去に別の選択をしていたら、違う結果になっていただろう」という後悔や想像を表すことができます。
仮定法過去完了の例文
・If I had studied harder, I would have passed the exam.
(もっと勉強していたら、試験に合格していただろう。)
・If she had left earlier, she wouldn’t have missed the train.
(彼女がもっと早く出発していたら、電車に乗り遅れなかったのに。)
・If they had taken my advice, they wouldn’t have made such a mistake.
(もし彼らが私のアドバイスを聞いていたら、そんなミスをしなかっただろう。)
・If we had saved more money, we could have traveled abroad last year.
(もっとお金を貯めていたら、去年海外旅行に行けたのに。)
このように、仮定法過去完了は「過去の出来事を違う結果にしたかった」というニュアンスを持ちます。特に後悔や反省を表現する際によく使われます。
4. 仮定法未来とは?
仮定法未来の基本ルール
仮定法未来は、未来の可能性が極めて低い出来事や、不確実な状況を仮定する際に使用される文法構造です。単なる未来の仮定ではなく、「実現する可能性はほとんどないが、もしそうなったら…」 というニュアンスを含みます。特に、フォーマルな文章や仮説的な状況を述べる際に用いられることが多く、ビジネスシーンや学術的な場面でも頻繁に使われます。
仮定法未来には、主に以下の2つのパターンがあります。
If + 主語 + should + 動詞の原形(万が一~なら)
この形は、「可能性は低いが、万が一~したら」 という意味を持ちます。特にフォーマルな表現や、丁寧な依頼・警告などの文脈でよく使われます。
If + 主語 + were to + 動詞の原形(仮に~なら)
こちらの構造は、「もし仮に~するようなことがあれば」 というニュアンスを持ち、極めて非現実的な未来の仮定を表します。「were to」を使うことで、より強調された仮定を示すことができます。
また、「were to」の構文は仮定法過去と似ていますが、未来に対する仮定 であることがポイントです。現実的には起こりえない、または非常に可能性が低い未来の出来事 を想定する場合に使われます。
仮定法未来の例文
「If + 主語 + should + 動詞の原形」 を使った例文
・If you should need any help, please let me know.
(万が一助けが必要なら、私に知らせてください。)
・If she should fail the test, she will have to retake it.
(万が一彼女がテストに落ちたら、再受験しなければならない。)
・If it should rain tomorrow, the event will be postponed.
(万が一明日雨が降ったら、イベントは延期されるでしょう。)
・If our company should go bankrupt, we would lose our jobs.
(万が一会社が倒産したら、私たちは職を失うことになるでしょう。)
「If + 主語 + were to + 動詞の原形」 を使った例文
・If I were to win the lottery, I would travel the world.
(もし宝くじに当たったら、世界中を旅行するだろう。)
・If humans were to live on Mars, many technological advancements would be needed.
(もし人類が火星に住むことになったら、多くの技術革新が必要になるだろう。)
・If she were to quit her job, she would start her own business.
(もし彼女が仕事を辞めるなら、自分のビジネスを始めるだろう。)
・If a giant asteroid were to hit Earth, it would cause massive destruction.
(もし巨大な小惑星が地球に衝突したら、壊滅的な被害をもたらすだろう。)
仮定法未来は、可能性が低い未来の出来事 を想定しながらも、さまざまなシナリオを考えたり、警告や提案を述べたりする際に非常に有用な文法です。
5. 仮定法を使ったその他の表現
I wish を使った表現
仮定法は「I wish」と組み合わせて、現状を変えたい願望を表すこともできます。
・I wish I were taller.
(もっと背が高かったらなぁ。)
・I wish you had told me the truth.
(本当のことを言ってくれていたらよかったのに。)
as if / as though を使った表現
「as if(まるで~のように)」を使うことで、仮定の話をすることができます。
・He talks as if he knew everything.
(彼はまるで全てを知っているかのように話す。)
・She behaves as if she were a princess.
(彼女はまるでお姫様のように振る舞う。)
6. まとめ
仮定法は、現実とは異なる状況を表すための重要な文法です。
仮定法過去: 現在の事実とは異なる仮定(If + 過去形)
仮定法過去完了: 過去の事実とは異なる仮定(If + had + 過去分詞)
仮定法未来: 未来の可能性が低い仮定(If + should / were to)
これらを適切に使い分けることで、より正確な英語表現ができるようになります。仮定法をマスターして、英語の表現力を向上させましょう!