英語学習において「仮定法過去」は重要な文法の一つです。「もし〇〇だったら、△△なのに」といった表現をする際に使われ、日常会話や試験でも頻出です。しかし、仮定法過去は「過去」の話をしているわけではなく、現在や未来の仮定を表すため、混乱しやすいポイントでもあります。本記事では、仮定法過去の意味、使い方、例文、注意点を詳しく解説します。

1. 仮定法過去とは?

仮定法過去(Past Subjunctive)は、現在の事実とは異なる仮定を表すときに使われる文法です。実際には起こり得ない、または可能性が低い状況を想定する際に使用します。

仮定法過去の基本構造

仮定法過去の文は、以下のような形で作られます。
If + 主語 + 過去形, 主語 + would/could/might + 動詞の原形

【例文】
• If I had a million dollars, I would buy a big house.
(もし100万ドル持っていたら、大きな家を買うのに。)
• If she were here, she could help us.
(もし彼女がここにいたら、私たちを助けられるのに。)

なぜ「過去形」を使うのか?

仮定法過去では「現在」の仮定を表すにもかかわらず、動詞の形は過去形になります。これは、事実とは異なることを示すための文法的なルールです。実際に過去を指しているわけではないので注意しましょう。

2. 仮定法過去の具体的な使い方

基本的な仮定表現

仮定法過去は、以下のような場合に使用されます。

1. 現実と異なる状況の仮定
例:If I were taller, I could play basketball better.
(もし私がもっと背が高かったら、バスケットボールが上手にできるのに。)
2. 現在の願望を表す
例:I wish I had more free time.
(もっと自由な時間があればいいのに。)

「If I were...」と「If I was...」の違い

「If I were」と「If I was」は、どちらも使われますが、よりフォーマルな英語では「If I were」が推奨されます。特に書き言葉や公式な場面では「If I were」を使うのが一般的です。

【例】
• If I were you, I would take the job. 〇(フォーマル)
• If I was you, I would take the job. ×(カジュアルだが文法的に不自然)

3. 仮定法過去を使った応用表現

「I wish」を使った表現

「I wish + 仮定法過去」は、現在の状況を変えたいという願望を表します。実際にはそうではないけれど、「もし~だったらなぁ」と思うときに使われます。日常会話では頻繁に登場し、ネイティブスピーカーもよく使う表現です。特に、自分の能力や状況、人間関係などについての願望を表すときに役立ちます。

【例】
• I wish I had a car.
(車を持っていたらなぁ。)
• I wish she were here.
(彼女がここにいればなぁ。)
• I wish I knew how to play the piano.
(ピアノが弾けたらなぁ。)
• I wish it weren’t so cold today.
(今日がこんなに寒くなければいいのに。)

また、「I wish」は自分だけでなく、他の人の行動に対しても使えます。たとえば、「彼がもっと勉強してくれたらいいのに」と言いたい場合は以下のように表現できます。

【例】
• I wish he studied harder.
(彼がもっと勉強してくれたらなぁ。)

このように、「I wish」を使えば、現実とは異なる理想的な状況を表現することができます。

「It’s time」を使った表現

「It’s (high) time + 仮定法過去」で「そろそろ~すべきだ」という意味を表します。この表現は、相手に対して「もう行動を起こすべきだ」と強く促すニュアンスを持ちます。「high」が入ると、より強調された表現になり、「もうとっくにやるべき時だ」といった意味合いになります。

【例】
• It’s high time you studied for the exam.
(そろそろ試験勉強をすべきだ。)
• It’s time we went home.
(もう家に帰る時間だ。)
• It’s about time he apologized to her.
(彼はそろそろ彼女に謝るべきだ。)

この表現では、「It’s time」の後には現在形ではなく過去形を使うことがポイントです。これは仮定法過去のルールで、実際にはまだ行動していないが、「今すぐやるべきだ」というニュアンスを強調するために過去形を用います。

また、以下のように「for + 名詞(動名詞)」の形で使うことも可能です。

【例】
• It’s time for bed.
(もう寝る時間だ。)
• It’s time for a change.
(そろそろ変化が必要だ。)

4. 仮定法過去のよくある間違いと注意点

「If」と「would」を同じ節で使わない

【誤】
• If I would be rich, I would travel the world. ×
【正】
• If I were rich, I would travel the world. 〇

仮定法過去の「If」節では「would」は使わず、動詞を過去形にするのがルールです。

「was」と「were」の使い分け

仮定法過去では、主語が「I, he, she, it」の場合でも、通常の過去形で使われる「was」ではなく、「were」を使うのが一般的です。これは、仮定法過去が現実とは異なる状況を表すため、通常の文法とは異なる特別なルールが適用されるからです。

特にフォーマルな文章や試験では、「were」を使うのが正しいとされます。しかし、カジュアルな日常会話では「was」が使われることもあります。そのため、会話の場面によっては「was」でも意味は通じますが、文法的には「were」を使うのが無難です。

【例】
• If she were my sister, I would be happy. 〇(正しい)
• If she was my sister, I would be happy. ×(口語では使われるが非推奨)

また、「I」の場合も同様に、「were」を使うのが正式な表現です。

【例】
• If I were rich, I would travel the world. 〇(正しい)
• If I was rich, I would travel the world. ×(口語では使われるが非推奨)

特に「If I were you(もし私があなたなら)」という表現は、ネイティブスピーカーがよく使うフレーズの一つです。この場合、「was」ではなく「were」が正しい形になります。

【例】
• If I were you, I would take that job. 〇(私があなたなら、その仕事を受けるだろう。)
• If I was you, I would take that job. ×(文法的には誤り)

ただし、最近のカジュアルな英会話では、「was」が使われることも増えています。例えば、アメリカ英語では若い世代を中心に「If I was you」のように話すことが増えてきました。しかし、文法的に正しい形を意識するなら、「were」を使うのがベストです。

このように、仮定法過去では「was」ではなく「were」を使うのが基本ルールですが、口語では「was」も使われることがある点を覚えておくと、実際の会話でも柔軟に対応できるでしょう。

5. まとめ

仮定法過去は、現在の事実とは異なる仮定を表す際に使われる重要な文法です。基本構造は「If + 過去形, 主語 + would + 動詞の原形」で、現実にはあり得ない状況を想定するのがポイントです。特に「If I were...」や「I wish + 仮定法過去」などの表現は、英会話や試験で頻出するため、しっかりと理解して使いこなしましょう。

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